高齢者とペットの問題研究会介護職の方向けQ&A ケアマネジャー、ヘルパーなど高齢者の介護サービスに従事する方々から寄せられた高齢者とペットの問題に関する質問にお答えします。
ペットは法律的には､「飼い主の財産（動産）」ですが、「感情を持った生き物」でもあります。飼い主とペットの両方に寄り添った対応をお願いできたら幸いです。

Q1.高齢者が犬（猫）を飼いたがっています。可能でしょうか？

A1.同居あるいはごく近くに家族や親族がいて、入院時や施設入所、死亡時に対応できるならよいですが、体制が整わない場合は残念ながら無理ではないでしょうか。
犬も猫も長生きすると20年の寿命があり、高齢になると病気の治療費が高額になることがあります。また、犬や猫自体が認知症などを発症することもあり、その世話には精神力も必要です。高齢の飼い主がそれを維持可能なのかを考える必要があります。

Q2.犬（猫）を飼っている高齢者宅を訪問した際に、問題の早期発見のためどのようなことに注意すればよいでしょうか？

A2.下記のチェックリストで一つでも該当する項目があれば、早めに予防策をすすめてください。
　・単身、または高齢者のみの世帯である
　・家族、親族と疎遠である
　・体力の低下が著しい、足腰が弱っている
　・金銭面に不安がある
　・部屋が汚れ、動物の排泄物が目に付く、動物の毛が飛散している
　・犬や猫が過剰に太っている、痩せている、汚れている
　・子猫が産まれている
予防策として次のようなことがありますので、行政の動物担当部署（川崎市の場合、区役所衛生課）や動物のボランティアと情報共有や連携できるとよいでしょう。
　・一時預かり先を見つけておく（血縁者、民間事業者など）
　・本人に心の準備をしてもらう
　・新たな飼い主を探しておく
　・終活ノートなどに記しておく

Q3.高齢者宅の猫にノミがいて、ヘルパーが刺されてしまいます。対策はありますか？

A3.飼い主にノミ駆除剤を猫につけてもらう必要があります。ノミ駆除剤は動物病院かインターネットで購入できます。体重によって容量が異なる場合があるので、体重に合わせたものを選びましょう。1匹分1,000円〜2,000円程度です。外に自由に出入りさせる飼い方をしている場合は、継続的に使用する必要があります。

Q4.犬（猫）を飼っている高齢者宅を訪問すると、犬（猫）がまとわりついたり、吠えたり、邪魔をしたりで仕事ができず困っています。犬（猫）にどのように接すればよいでしょうか？

A4.原則は「無視」です。動物好きの方は初対面からかまってしまいがちですが、相手にしないことで、こちらには敵意がなく、害にも利益にもならない存在であることを、犬や猫に理解させるのです。犬や猫がそう認識することにより、訪問時のトラブルを減らすことができます。

Q5.訪問先の高齢者宅で毎年、子猫が生まれていて増えています。どのように対処したらよいでしょうか？

A5.早急に親猫の不妊去勢手術が必要です。料金は1匹数万円かかり、病院によって違うので確認が必要です。飼い主本人が病院に連れて行くことができないようでしたら、行政の動物担当部署（川崎市の場合は区役所衛生課）に相談しましょう。

Q6.訪問先の高齢者がノラ猫に庭で餌を与えています。続けても問題ないでしょうか？

A6.餌を与えることは悪いことではありませんが、近隣住民とのトラブルが起きやすいので、必要があれば行政の動物担当部署（川崎市の場合、区役所衛生課）に連絡し、以下のことを勧めてもらうとよいでしょう。
＜適正飼養の指導＞
　・不妊去勢手術
　・餌を与える時間を決め、置き餌（餌の置きっぱなし）をしない
　・トイレの設置

Q7.犬（猫）を病院へ連れて行くのが難しい高齢の飼い主が利用できるサービスはありますか？

A7.民間の送迎代行サービスやペット専用のタクシーを使ってペットを運ぶことができます。往診可能な動物病院もあります。ペットの世話に対応している訪問介護事業者もありますが、介護保険の対象外のため全額自己負担となります。

Q8.地方に住む親族が、高齢者の犬（猫）を引き取ることになりましたが、どのように運搬したらよいでしょうか？

A8.犬や猫も電車や飛行機に乗せることができます。ケージに入れることなどを定めた規定や料金については、各鉄道会社や航空会社に問い合わせてください。

Q9.高齢者の飼い犬（猫）が死にました。どうしたらよいでしょうか？

A9.川崎市では1体3,000円で死体の処理をしてくれます。動物専用の焼却炉で処理しますが、遺骨の返還はしてくれません。各区の生活環境事業所に申し込んでください。
　川崎区　044-266-5747
　幸区・中原区　044-411-9220
　高津区・宮前区　044-866-9131
　多摩区・麻生区　044-933-4111
民間のペット葬儀会社もあります。遺骨を返還してくれるプランもあります。料金は様々で数万円はかかりますので直接ご確認ください。

Q10.近い将来飼い主の高齢者が施設に入る可能性があります。犬（猫）を手放すよう説得するにはどうしたらよいですか？

A10.犬も猫も1年でも若いときのほうが、次の飼い主が見つかりやすいですから、その子の幸せを考えるなら早く手放したほうがよいです。
とはいえ、本人にとっては辛い判断になりますので、時間をかけて寄り添った対応が必要となります。精神的ケアができる方や、動物関係のボランティアのサポートを受けられるとよいです。
また、引き取る側の状況確認も必要です。たとえば、集合住宅の場合は飼育可であるか、同居家族にアレルギーがないかなどです。
犬の場合、引き取り先で登録をする必要があります。マイクロチップが入っている場合は、飼い主の変更届など、付随する手続きがいろいろあります。

Q11.飼い主が高齢で、犬（猫）を最後まで飼うことができない可能性があるため、飼い主の死後は子が犬（猫）を引き取って飼育するという話がついているようです。飼育費用はどのくらい用意するべきと助言すればよいでしょうか？

A11.飼育の生涯必要経費は、犬は2,446千円、猫は1,498千円という調査結果があります（一般社団法人ペットフード協会令和5年全国犬猫飼育実態調査）。飼育環境や健康状態によって必要経費は大きく変わりますので、現在の年間必要経費から犬や猫が仮に20歳まで生きた場合の生涯必要経費を推計してみてはいかがでしょうか。

Q12.犬（猫）を飼っている高齢者が一時的に入院することになりました。身近に犬（猫）の世話をしてくれる人はいません。どうしたらよいでしょうか？

A12.ペットホテルなどの一時的な預け先を探すか、ペットシッターに依頼する方法があります。インターネットで探す場合は「ペットホテル＋地域名」や「ペットシッター＋地域名」を入力することで見つかることがあります。また、かかりつけの獣医師へ相談してみるのもよいでしょう。いずれにしても契約や利用開始までそれなりに時間がかかります。いざという時のため、事前にどこにお願いをするのか、何が必要かなど、早めの準備をしておくのが望ましいです。
ペットホテル、ペットシッターなどを利用する場合には、事前に動物取扱業の登録がされているかどうかの確認が必要です。
今後入院が頻繁になるような場合や、施設に入所する期間が長いようであれば、飼い続けることが可能かどうか考えていただく必要もあります。

Q13.犬（猫）を飼っている独居の高齢者が施設に入ることになりました。残された犬（猫）はどうしたらよいでしょうか？

A13.親族を探して、飼えないか打診する必要があります。ペットは飼い主の財産（動産）とみなされますので勝手に連れ出すことはできません。犬や猫の年齢や健康状態によっては所定の手続き（所有権放棄など）の後、次の飼い主を探すことも可能です。行政の高齢福祉部署、動物担当部署（川崎市の場合は区役所衛生課）に至急連絡してください。どうしても飼い続けられない場合は、本人からの依頼があれば有料で動物愛護センターが引き取りをしてくれる可能性もあります。高齢や病気の犬や猫の譲渡は難しく、殺処分の可能性もあります。
最近は老犬老猫ホームもあるので、候補のひとつとして検討してみるのもよいでしょう。老犬老猫ホームなどを利用する場合には、事前に動物取扱業の登録がされているかどうか確認が必要です。
全てに時間が必要なので、「これは危ない」と思ったら、早めの準備が必要です。

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